キッチンの立ち位置から通路を見る。
突き当たって左手は玄関クロークになっていて 外出から帰ったらクロークを通りぬけて
そのままキッチンへとアクセスできる動線になっています。
床のフローリングも、天井の杉パネルも 木目が奥行き方向へと伸びるように向きを揃えて
さらに突き当たりに大きめの窓を開けることで 目線をさらに遠くへと運びます。
家の中でよく居る場所から見える先、 あるいは動線の先の目線が遠くへと抜けることで
屋内の広がり感は、ずいぶんと変わるものです。
目線が遠くへと抜けてゆく空間は 気持ちいいものですよね。
一般的な階段のつくりと言えば 両側に支えとなる側板が1階床から2階床へと掛けられて
その間に踏み板と蹴込み板をはめ込むというつくりですが
南小足の家の階段はこのように 杉パネルを使ってひな壇形状の箱を組み立てたような いわば、
面の構成のみで出来た階段です。
階段が掛かっている、というよりは ちょこんと置かれている、という感じでしょうか。
家族が集うスペースの中につくる階段は その空間を構成する設えのひとつとなるので
ただ上り下りするだけの通路をつくるというよりは その場に馴染む家具をつくるような感覚で設計します。
こうしてオープンなつくりとすることで 階段をベンチのように使えるようになります。
ここにもひとつの居場所ができるのです。
もちろん、この箱階段の内部は がらんどうの大容量収納になっています。
階段もいろいろ工夫することで おもしろい付加価値を持たせることが出来るのです。
建物が完成したら、必ず夜に現場に足を運んで 設計時にいろいろとシミュレーションしながら
立てた照明計画について 実際の効果を確認することにしています。
明かりの配置バランスは良かったか、 欲しい所に欲しいだけの明るさは確保できているか、
無駄に明る過ぎないか、 明暗のメリハリが効いているか・・・
陽が落ちてからの、家族団らんの時間。
そんな時、明かりがどんな雰囲気をつくり出すのかは とても大切なことだと思います。
照度を得るという機能を満たしながら 心身ともにリラックスできる夜の空間を演出する。
明かりの持つ力は、意外に大きいのです。
『南小足の家』
報告が遅くなりましたが、週末に行った『南小足の家』完成見学会、
土日ともジリジリと真夏の陽射しが照りつける暑い二日間であったにもかかわらず
今回もたくさんのお客様にご来場いただき、本当にありがとうございました。
建物にはエアコンも設置済みではありましたが、そこは電源OFFに。
夏の太陽高度の陽射しを家の中に入れないための 深い軒の出や大きな庇のつくり、
方位ごとの窓の取り方や断熱性能の高いサッシ、 そして家中よどみなく風が通り抜けるように
検討した 開口部の取り方と間仕切りのないオープンな空間。
そうした設計や建築の工夫で エアコンに頼らなくても涼しく過ごせる家づくりを
皆様に体感していただけたことと思います。
夏を涼しくする様々な工夫は 何も特別新しい技術や発想ではなく 本来、
日本の家づくりの中に受け継がれてきたものばかりです。
地域の伝統的な家づくりの中に あらためて見直したい工夫や素材がたくさんあります。
週明けには完成写真もすかさず撮り終えましたので 近いうちに順次アップしていきたいと思います。
住まい手のTさまには、今回の見学会に 快く新居をお貸しくださり、ありがとうございました。
今週末にはお引き渡しとなりますが これからも末永く、どうぞよろしくお願いします。
家のプランニングにおいてサニタリースペースは 得てして、北側の暗いほうへと追いやられがち。
外からの視線も気になるので 窓も小さいものになることが多いようです。
でも、毎朝家族みんなが使う場所であり 顔を洗ってシャキッと頭のスイッチを入れる時でもあるので
できるだけ自然光で明るいスペースになるように考えています。
壁に大きな窓が取りにくい場合は 高窓やトップライトで自然光を取り込みます。
やっぱり、朝の爽快感、覚醒感が違ってくると思います。
それとできれば、親子並んで使えるだけの 間口のある洗面カウンターをつくるようにしています。
いそがしい朝のルーティーンの中でも 身支度しながらちょっとした会話が生まれれば、と思っています。