今日は午後から、地元の建築士会が企画した
伝統的な町家建築の耐震改修実例の見学に参加してきました。
場所は彦根銀座の花しょうぶ通り沿い。
昔ながらの町家が軒を連ねる
なんとも雰囲気のある通りです。
会場となったのは、こちらの建物。
築250年!の商家を町のコミュニティの場として利用するために
3年前に耐震改修が実施されたそうです。
外観はそれほどリニューアルされておらず
あくまで従来の佇まいを残しているところがいいですね。

この耐震改修の実施にあたって
耐震診断、耐震補強の計画に携わられたのが
こちらの滋賀県立大学環境建築デザイン学科の高田先生。
宮城県北部地震や新潟県中越地震などの被害調査にも携わられた
建築構造学の専門家です。

この計画にあたっては、特に予算が限られていたので
実際の工事は地元の工務店さんが中心となり
地域の皆さんも参加して、自分達で出来る事は協力して行うという
地域住民参加型で行われたそうです。
そういった諸々の事情もあってか、
改修範囲も実際に使う1階部分のみで
工法も比較的簡易なやり方が採用されていました。
こちらの木格子、一見意匠的な飾り格子のようですが
耐震補強を目的として設けられた「面格子壁」なのです。

鰻の寝床のような建物の耐震補強というと
あちこちに耐震壁をつくって骨組みを固めていく、
そんな工法を連想しがちですが
今回の建物、補強レベルとしてはそこそこ、ではありますが
あくまで従来の町家建築の雰囲気を損なうことなく
コスト的にも意匠的にも上手く改修されていて
いい実例を見せていただくことができました。
また今後の参考にさせていただこうと思います。
そして、見学しながらやはり気になる建物のディテール。
こちらは奥行きの長い建物の採光を補うためのトップライト。
瓦屋根が一部くり抜かれて透明の波板が葺かれている
なんともシンプルなつくり。

面白いな、と思ったのがこのガラス戸。
アルミサッシに取替えず、元々の建具がそのまま使われていて
外の縦格子とあいまってなかなかの雰囲気。
このガラス戸のつくりをよく見てみると・・・

中央部分が引き違い窓になっているのです。
職人がつくる木製建具ならではの細かい仕事。
そしてこれを大切に使い続けていることも
地域の皆さんの建物に対する愛着の現れだと思います。

こうして長い年月を経ても
愛され続ける建物をつくっていきたいですね。
豊住研(太田)